【こんな症例も治りますシリーズ 743】『 セカンドオピニオン診療: 犬の苔癬化した慢性皮膚炎 』も適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、犬の黒く肥厚した腹部の皮膚炎です。

 

 

犬 柴犬 3歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 痒みが治らない、脱毛が広がってフケも出てきた 】とのことで、セカンドオピニオン診療のために来院されました。

 

 

 

◆◆ 飼主様からお話を伺ってみると、三ヶ月くらい前に脇腹を痒がることから、近院に連れて行ったところ、「皮膚炎」と言われ、塗り薬を処方されたけれど良くならず、逆に、徐々に脱毛がお腹や目の周りに広がって、皮膚は黒く硬くなり像の皮膚の様にゴワゴワでフケも出始めた(苔癬化)とのことで来院されました。

 

 

 

■ 痒みを伴う皮膚病としては膿皮症、疥癬症、マラセチア症、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎が考えられますが、これらの皮膚炎が慢性化すると皮膚が黒く変色していき(黒色沈着)、象の皮膚のように硬い状態(苔癬化)になってしまいます。

 

 

 

■ 苔癬化してしまった皮膚を元通りに戻すには適切な診断と治療を行うことが重要です。

 

 

 

■ 皮膚炎の診断には、細菌、真菌や寄生虫などの感染症の評価、「食物アレルギー」、「アトピー性皮膚炎」の評価を行い、その後、これら原因に基づいた治療を行います。

 

 

 

◆◆ さて、このワンちゃんの場合、当院で身体検査及び皮膚検査を行った結果、細菌、真菌や寄生虫等の感染性皮膚炎の可能性は除外されました。

 

 

 

■ したがって、残るのは「食物アレルギー」か「アトピー性皮膚炎」の可能性が考えられました。

 

 

 

■ 通常、両者の鑑別診断には、症状の好発部位、発症年齢、食事内容に変化等の問診に加え、血液中のアレルギーの原因物質(アレルゲン)を検査する「アレルギー反応試験」を行いますが、今回の場合、まずは、痒みを止めて、ワンちゃんのQOL(生活する上での質的向上)をあげること。そして、苔癬化でバリア機能が破壊されている皮膚を早く元の状態に戻してあげることを中心に治療を進めることにしました。

 

 

 

 

◆◆ 具体的には、飲み薬のかゆみ止め、また皮膚のバリア機能を向上させる効果を持つ療法食を処方して、経過観察することとしました。

 

 

 

■ その結果、2週間後、来院してもらうと、痒みは全くなくなり、また、脱毛の広がりも止まり、眼の周り、脇腹、股の発毛及び苔癬化した皮膚症状が改善されていました。

 

 

■ 今後は、どこかのタイミングで「アレルギー反応試験」を実施し、原因物質を調べる必要がありますが、アレルゲンが示されたとしても、それを完全に回避しアレルギーを根治させることは難しいと言われています。 また、一旦、良くなったとしても何らかの原因で再発することがあり、このワンちゃんの場合も、長期間の治療が必要となる可能性は否定できません。

 

 

 

■ これからも、痒み止めやスキンケアを中心に、再生医療やオゾン治療も考慮に入れながら、飼い主様と一緒になって動物さんの健やかな幸せを考えていければと思います。

 

 

 

獣医師 泉 政明

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