【こんな症例も治りますシリーズ 644】 『 高齢で心臓病などの持病があるワンちゃんの膀胱炎 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、オス犬の泌尿器のイラストです。

■ メスに比べると、尿道の長さが長く、前立腺も尿道に関係していますので、『 尿道関連の病気 』が多いです。

■ メスはオスに比べると、尿道が太く短い関係で、バイ菌が膀胱に逆流しやすく、『 膀胱関連の病気が多い 』です。

 

 

犬 ミックス犬 12歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 近頃いつもと違う場所でオシッコをしちゃう。 色が緑っぽい 】とのことで来院されました。

 

 

 

◆◆ 飼主様からお話を伺ってみると、『 いつも散歩中に外でオシッコをしてるけど、最近、夜に部屋の片隅やトイレの前の床にオシッコをするんです。 量は少しですが、色が緑っぽいことから、ちょっと心配で 』とのことで当院に来院されました。

 

 

■ ワンちゃんが高齢ですから、腫瘍なども含めて併発している病気も複数ありそうです。
見逃しが無いように、腰を据えて診断をしていきます。

 

 

 

◆◆ まず、膀胱(ぼうこう)炎とは、膀胱の粘膜に炎症が起きる病気です。

 

 

 

■ 原因としては、

 

 

① 細菌感染(細菌性膀胱炎)

② 膀胱結石(尿石症)

③ その他に内分泌疾患や前立腺疾患、膀胱の腫瘍やポリープなどが考えられます。

 

 

 

 

■ 膀胱炎の症状は、

 

 

① 何度もトイレに行く

② (少量の)オシッコを何度もする

③ 尿の色が赤い、茶色いや濃い黄色になる

④ オシッコがなかなかでない

⑤ トイレ以外のところでオシッコを漏らしてしまうなどがあります。

 

 

 

■ 膀胱炎が疑われたら、

 

① 腹部の触診、

② 尿検査やレントゲン検査、

③ 超音波検査(エコー検査)などを行います。

 

 

 

 

■ 膀胱炎の治療としては、

 

 

① 細菌性膀胱炎では、抗菌薬を使った治療が必要になります。

 

また、

② 結石や結晶による膀胱炎の場合は、食事療法などで対応できるケースと外科的に摘出しなければならないケースがあります。

 

③ その他の原因よる膀胱炎に対しては、各原因と膀胱炎の治療を行います。

 

 

 

◆◆ さて、このワンちゃんの場合、問診の結果から『 膀胱炎 』が疑われましたが、さらにオシッコが緑色をしているとのことから、緑膿菌という細菌感染を起こしている可能性が考えられました。

 

 

 

■ そこで、血液検査、尿検査及びエコー検査を行なったところ、血液検査での腎パネルの数値は特に問題はなかったのですが、エコー検査で膀胱に結石が認められました。

 

■ また、尿検査では、色調:濃い黄色、pH:6.0、尿比重:1.030、蛋白質:2+、潜血反応:3+、でした。

 

 

■ また、今回、顕微鏡下で、細菌は認められなかったのですが、細菌感染は否定できないため、原因菌を特定し、その菌に効果的な抗菌薬を選択することができる細菌培養試験・薬剤感受性試験を実施することとしました。

 

 

 

 

◆◆ 今回の検査結果から、「膀胱炎」と診断され、その原因としては、膀胱結石と細菌感染が考えられました。

 

 

■ 通常、結石が見つかった場合、外科的治療が第一選択となりますが、高齢で、また心臓病を患っていることから、飼主様の希望により、今後は治療としては食事療法を基本とし、また細菌培養試験の結果によっては、膀胱炎の原因菌に効果的な抗菌薬を併用していく予定です。

 

 

 

※※ 膀胱炎は、ワンちゃんには比較的よく起こる病気です。

 

 

※ 検査をしっかり行い、原因を究明しておくことで、再発を防ぎ、結石や細菌感染などを早期に治療することが可能となります。

 

 

※ そのためには、普段からおしっこの量や色、回数などに注意してみておくことが重要です。

 

 

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

獣医師 泉 政明

 

 

Page Top