【こんな症例も治りますシリーズ 637】 『 犬の皮下肥満細胞腫 』も 適切な診断と治療でコントロールします

↑ 上の写真は、皮下と皮膚肥満細胞腫の比較です。

■ 左の写真は、『皮下』肥満細胞腫の病理組織像です。

■ 右の写真は、『皮膚』肥満細胞腫の病理組織像です。

★ 違いは、青矢印が指している皮膚の位置です。

★ 皮膚の下にあるシコリが、『皮下~』です。

★ 皮膚にあるシコリが、『皮膚~』です。

 

 

参照サイト:

https://00m.in/wFAnA

https://00m.in/SN9t3

 

犬、アメリカンピットブルテリア、2歳、メス(避妊手術済み)

 

 

【 かかりつけ医で定期健診の際に、左後肢の皮膚に1cm程度のしこりが見つかりました 】という事で来院されました。

 

 

◆◆ かかりつけ動物病院で、その部位の細胞診検査を行ったところ、『 肥満細胞腫 』という結果で、CT検査での腫瘍の広がりと転移の確認、手術を勧められて当院に来られました。

 

 

 

 

■ 当院に来た時点でしこりの大きさは変わっておらず、CT検査とリンパ節の細胞診検査では悪性腫瘍の転移は確認されませんでした。

 

 

■ CT検査でも腫瘍の大きさは1.5cm程度で、周囲の組織への浸潤は認められませんでした。

 

 

■ これらの状況から、しっかりと切除することで完治が期待できると判断し手術を行いました。

 

 

■ 腫瘍化した肥満細胞を体に残さないように、腫瘍の周囲から水平方向に2cm以上の余白を作って皮膚ごと切除し、垂直方向も筋肉の表面を覆っている筋膜ごと切除しました。

 

 

 

 

■■ 病理組織検査の結果は『 皮 \ 下 / 肥満細胞腫 』で、通常『 皮 \ 膚 / 肥満細胞腫 』の悪性度の指標として使われるグレード分類は適応できません。

 

 

■ しかし、細胞分裂像は少なく、血管内への細胞の侵入も認められなかったことから、腫瘍の悪性度は低いと考えられました。

 

 

■ また、十分な余白(腫瘍塊開線までの距離)をとって切除したことで、切除範囲外への細胞の広がりも認められず、完全な切除ができました。

 

 

 

◆◆ 犬の皮膚肥満細胞腫は、普段はアレルギー反応などに関与している肥満細胞の腫瘍です。

 

 

 

 

■ 犬ではよく見られる悪性腫瘍のひとつで、皮膚に出来る腫瘍の16-21%を占めると報告されています。

 

 

 

 

 

■ どの犬種でもかかる病気ですが、ボクサー、アメリカンピットブルテリア、フレンチブルドッグ、ラブラドールレトリーバーで発生率が高いと報告されています。

 

 

 

 

■■ 肥満細胞腫はその悪性度によって予後が大きく変わります。

 

 

 

■ 今回のように適切な検査によって悪性度が低いことが確認できれば、手術によってほとんどの場合は完治する腫瘍です。

 

 

 

■ 飼い主様も診断された後からサプリメントなどで免疫力を高めるケアを行ってくださったこともあり、腫瘍の広がりも最小限で済み、手術後も元気いっぱいに過ごしています。

 

 

 

 

◆◆ 小さなしこりであっても、検査をしてみると実は怖い病気が見つかることがよくあります。

 

 

 

 

■ これくらい大丈夫かな?ではなく、小さなことでも検査で正確に病気を診断することで、早期発見早期治療につながります。

 

 

 

■ 怖い病気でも早期発見で完治させることもできますので、気になることがあれば些細なことでも遠慮なくご相談ください。

 

 

 

 

獣医師 別府雅彦

 

 

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