【こんな症例も治りますシリーズ 610】 犬の『 直腸の形質細胞腫(腫瘍) 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上のイラストは、直腸アプローチのプルースルー手術方法です。

■ A、B、C、Dへと順番に手術を行います。

■ しっかりと腫瘍を取りきるのはもちろんですが、このステップの中で重要なのは、私はBだと思います。

■ Bで手を抜くと、失敗するケースが増えると思います。

 

 

 

参照サイト:

https://00m.in/dS6GO

 

犬 ビーグル犬 11歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 ウンチが出にくい状態が続いていて、お尻から赤いシコリが出てくる 】という事で来院されました。

 

 

 

◆◆ 診察してみると、直ぐに肛門から腫瘍のカタマリが出ている姿が見えました。

 

 

■ このような時は、直ぐに複数の検査をするのではなく、『 五感を使って情報を集めろ 』と母校の麻布大学の某教授から耳にタコが出来るぐらい教えられてきました。

 

 

■ そこで、肛門に指を入れたり、肛門以外のカラダの外部から圧迫するなどしてシコリが触れないか?、臭いはどうか?、シコリの硬さや形はどういう形状だろうか?、シコリの底面が腸の筋肉へ固着しているかの具合や出血や、触った時の痛みはないだろうか?、、、 と一通りの情報集めを行いました。

 

 

 

■■ 続けて、血液検査、レントゲンや超音波エコーなどの画像診断を行いました。

 

 

 

■ 肛門の近くの腸管は『 直腸 』というのですが、この子は直腸の内側にシコリが全周に渡って出来ておりましたが、骨盤があるので普通の一般検査では『 どこまで奥行きのある腫瘍なのか 』が分かりませんでした。

 

 

 

■■ そこで、まだ院内にCT検査装置が無い時期の症例でしたので、次の検査として、消化管内視鏡検査(病理組織検査を含む)と特殊なバリウム検査を行って、腫瘍の全体像を把握しました。

 

 

★ これは本当に重要な項目、すなわち、手術方法を決定する『 大切な検査 』なのです。

 

 

 

★ すなわち、この腫瘍の大きさに奥行きが無く、骨盤腔内にあるケースであれば、『 肛門からのアプローチ(プルースルー法)の手術 』のみで良いです。

 

 

 

★ もし、この腫瘍の一部だけでも骨盤腔内を越えて、頭側の大腸にも存在しているケースであれば、『 プルースルー法と共に、お腹のおへその部分から腹腔内切開をして、大腸も切除しないといけません 』。

ようするに、2つの手術を行う必要があるのです。

 

 

■ 幸いにも、このワンちゃんの腫瘍は、肛門近くに集中しており、腸管の筋肉層までは至っていない状態でしたので、手術は『 直腸アプローチのプルースルー腫瘍摘出法 』で良い事が分かりました。

 

 

 

■ また、内視鏡検査を行った際に同時に行った、シコリの一部の組織を検査(生検)した病理組織検査では、『 形質細胞腫 』が一番に疑われるとの結果でした。

 

 

 

 

◆◆ ここで手術計画がシッカリと立ちました。 いわゆる『 治療方法の見積り計画 』です。

 

 

 

★ 何度も出てきた『 直腸アプローチのプルースルー腫瘍摘出法 』の手術だけで、この子は助かります。
(上のイラストがプルースルー法の手術方法です)

 

 

★ 成功のコツは、肛門からの手術ですので、『 いかに衛生的に綺麗に手術を終わらせるか 』と『 上質な手術糸と手術器具 』、そして『 縫合部に張力がかからない腸管同士の“ ゆとり形成術 ” 』だと思います。

 

 

 

★ 何度この手術をやっても、【 手術計画どおりに成功した時 】が最高です。

 

 

 

■ この子も、無事に手術は成功致しました。

 

 

 

■ 悪性腫瘍の再発も無く、その後もフィラリア症予防やワクチン予防に来られていました。

 

 

 

★ また、ワンちゃんを通した“ 幸せ創り ”が出来ました。 

 

 

 

獣医師 高橋 俊一

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