【こんな症例も治りますシリーズ 608】 犬の『 巨大な鼠径(そけい)ヘルニア 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、このワンちゃんのCT画像です。

■ この画像は、後腹部の横方向の断面CT画像です。

■ 赤矢印で囲った部分が、鼠径ヘルニアから出ている脂肪です。

■ 赤丸の部分が、問題の鼠径ヘルニアです。

 

 

犬 ミニチュアダックス 7歳 メス(避妊手術済み)

 

 

【 ここ数カ月前から、お腹の左側が膨らんできた 】という事で来院されました。

 

 

 

◆◆◆ 診察したところ、直ぐに触診で左側の鼠径(そけい)ヘルニアである事が分かりました。

 

 

 

■ ミニチュアダックスの場合、生まれつきの鼠径(そけい)ヘルニアの子が多いのですが、今回は腹壁がかなり大きくカラダの縦方向に切れて、穴(ヘルニア輪)が開いており、飼主様の話では、腹腔内の腸管がヘルニア輪から出る事が頻回になってきたとの事でした。

 

 

 

※ 腸管が腹壁から出ると言っても、腹壁の外側に皮膚がありますので、外界に腸管が出てしまう事は無いので、安心して下さい。

 

 

 

■ 巨大な鼠径ヘルニアの場合、筋肉が薄く萎縮している場合が多いので、事前にCT検査を行って、『 通常の鼠径ヘルニア整復手術よりも、異なる方法でヘルニア部分を整復しないといけないか 』、充分に検討を致しました。

 

 

 

■ 巨大な腹壁ヘルニアや、胸壁・腹壁の腫瘍手術の時にも使う、メッシュという『 外科用のネット状の腹壁補強材 』が当院には数種類ありますので、すぐに対応出来ますから問題は無いのです。

 

 

 

■ しかし、事前に起こりうる手術中の細かいバリエーションを考えながら手術計画を立てていくためには、CT検査は必須です。

 

 

 

◆◆ CT検査の結果は、触診して感じたヘルニア輪よりも『 正常に近いボーダーラインの鼠径ヘルニア 』でありました。

 

 

 

★ 今回のワンちゃんの鼠径ヘルニア輪は、縦方向に大きく切れている形(12cm長)をしているので、体位(カラダの姿勢)によって『 穴の大きさが大きくなったり、細くなったり 』変化していました。

 

 

 

★ CT検査をする際は、後ろ足を伸ばすので、今回のヘルニア輪が縦方向に伸ばされて、横幅は触診時よりも狭くCT撮影されました。

 

 

 

■ 手術では、事前対策としてオプションの医療器材としてメッシュは用意しましたが、実際には委縮していたヘルニア輪の周囲の筋肉を元の形に戻して、特殊な方法で縫合して『 鼠径ヘルニア整復手術 』は成功致しました。

 

 

 

 

※ 鼠径部は、通常は大腿部や陰部への動静脈血管や、神経の束が通過している部位ですので、整復手術を行う際に、ヘルニア輪を手術糸で締めすぎて血行障害や神経障害が残りやすい部位ですが、今回も問題無く手術を終える事が出来ました。

 

 

 

 

★ 反対側の鼠径部もヘルニアになるケースが多い、と獣医臨床学の専門書に書いてありますが、今のところ問題は起きておりません。

 

 

 

◆◆◆ かかりつけ医で、『 これは手術が出来ない巨大な鼠径ヘルニア・腹壁ヘルニア 』と言われてしまっても、諦めないで当院に一度お問い合わせください。

 

 

 

よろしくお願いいたします。

 

 

 

獣医師 高橋 俊一

 

 

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