【こんな症例も治りますシリーズ 606】 犬の『 筋色素(ミオグロビン)尿症 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、犬の尿の比較です。

■ 左は普通の尿で、右はミオグロビン尿です。

 

参照サイト:

https://00m.in/a2oPm

 

 

犬 ミニチュアダックス 6歳 オス(去勢手術済み)

 

 

【 ペットシーツが赤く染まっていた 】という事で来院されました。

 

 

◆◆ 飼い主様にお話を伺ってみると、『 朝の散歩から帰ってしばらくすると、部屋の隅に置いてあるトイレでオシッコをしたのですが、後で片付けに行ったら、ペットシーツが真っ赤に染まっていて、びっくりして病院に連れてきた 』とのことでした。

 

 

 

■■ オシッコの色が赤い場合、その原因や赤色の正体によって次の3つに分けることができます。

 

 

① 血尿          : 出血(膀胱炎、結石、腫瘍など)

② 血色素(ヘモグロビン)尿: 溶血(タマネギ中毒、フィラリア症、薬物や毒物など)

③ 筋色素(ミオグロビン)尿: 筋肉の損傷(過剰な運動、痙攣、筋炎など)

 

 

 

★★ これらの鑑別は、主に、尿検査、血液検査よって診断されます。

 

 

■ オシッコを遠心分離させたとき、上澄みは透明で沈渣に赤血球が見い出せれば血尿と確定できます。

 

 

■ 一方、血色素尿や筋色素尿ではオシッコを遠心分離しても上澄みは赤いままですが、血液を遠心分離したとき、血色素尿では上澄みがピンク~赤色であり、溶血があったことがわかりますが、筋色素尿では上澄みは赤色に着色していないことから、この2つを鑑別することができます。

 

 

◆ また、血液検査ではCPKと呼ばれる筋酵素の上昇でミオグロビング尿かどうかをチェックします。

 

 

◆◆◆ さて、このワンちゃんの場合、レントゲン検査の結果から結石等はみられず、尿検査では尿は赤褐色で沈渣に赤血球は認められないこと、また血液検査では溶血はなくCPKが高値を示したことから、総合的に判断して『 筋色素尿症 』であると診断しました。

 

 

 

■ 筋色素とは、動物の筋肉の赤色の素になっている色素『 ミオグロビン 』のことをいいます。

 

 

■ ミオグロビンは、ヘモグロビンと同様にFe(鉄)を含むタンパク質で、酸素と結合する性質をもっています。

 

 

■ ヘモグロビンは赤血球の中にあり、酸素を体中に運ぶのに対して、ミオグロビンは筋肉の中にあって、運ばれてきた酸素を貯蔵する役目をしています。

 

 

 

■ この筋肉が過剰な運動や筋炎などの理由で損傷し、ミオグロビンが漏れ出して尿に混じったものが筋色素尿です。

 

 

 

 

■ また、筋色素尿ではミオグロビンが腎臓に流れ込むため、急性腎障害を生じることがあり、治療には、早く体外に排泄させることが重要となります。

 

 

 

 

 

◆◆ 今回は、検査結果を踏まて、改めて飼い主様からお話を伺ってみると、『 昨日の夕方のまだ暑い中、いつもより長くドッグランで遊ばせたこと。 夜は親戚の子供たちが来ていたため、あまり寝ていなかったこと。 今朝も外に行きたがるので2時間くらい散歩して帰ってきたこと 』をお話下さいました。

 

 

 

■ ちなみに最初の身体検査で体温を測ったところ、高熱の40.2℃ありました。

 

 

 

 

◆◆◆ 診断は、『 複合的な原因によるが、最終的には熱中症によるミオグロビン尿症 』と診断しました。

 

■ 治療としては、緊急に体温のクーリングを行い、点滴で急性腎障害を防ぐため3日間は通院してもらうことにしました。

 

 

※ 通常は急変に備えて、入院をするのですが、飼主様の希望で今回は通院治療となりました。

 

 

 

 

■ その結果、帰宅後の尿はまだ赤褐色でしたが、次の日からオシッコの色は正常に戻り、血液検査の結果もCPK値も下がり、腎機能も特に問題はありませんでした。

 

 

 

 

■ 気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

獣医師 泉 政明

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