【こんな症例も治りますシリーズ 602】 ウサギの『 内耳前庭部の病気 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、ウサギの首が傾いている症状を示しています。

 

うさぎ 5歳 メス(未避妊手術)

 

 

【 昨日から首が傾いている 】という事で来院されました。

 

 

◆◆ 診察をしてみると、首が右側に傾き、また目が揺れ動く眼振をおこしています。

 

 

 

■ 右斜頸、急速相は左の水平眼振でした。

 

 

※ もう少し分かり易く説明しますと、

 

1) 『 ウサギさんの首が、右に傾いて元に戻らない 』症状と、

 

 

2) 『 水平眼振とは、目が左右方向(水平方向)に継続的に無意識下で動いてしまい、この目の動き方に特徴があって、一方向にゆっくり動く眼振緩徐相と、反対方向に速く動く眼振急速相を反復する動きです。 』

 

 

3) 『 このウサギさんの眼振急速相が左方向 』の症状でした。

 

 

 

 

■ この病気は、『 内耳の前庭疾患 』です。

 

 

★ 前庭疾患とは、耳の内耳前庭と呼ばれる平衡感覚を司る領域が、なんらかの原因に侵され、神経症状が起きた状態です。前庭は末梢(内耳)と中枢(脳)に分けられます。

 

 

 

★ 前庭疾患は、症状が軽度であれば軽い首の傾きだけですが、重症になると首が90°以上傾いたり、カラダ全体がローリングしてしまったりすることもあります。

 

 

 

 

 

◆◆◆ うさぎの前庭疾患は、寄生虫や細菌感染など、様々な原因があります。

 

 

■ エンセファリットゾーンという寄生虫は、うさぎの40%以上が感染しているというデータがあります。

 

 

■ 感染しているうさぎが妊娠すると、胎盤を通して胎児に感染したり、多頭飼いの場合、尿中から他のウサギさんに感染することもあります。

 

 

■ この寄生虫は前庭疾患だけでなく、目の病気である『 ぶどう膜炎 』や『 白内障 』に関与することもあります。

 

 

 

 

■ また、うさぎの前庭疾患は、細菌のパスツレラ菌に起因されることもあります。

 

 

★ この細菌のパスツレラ菌場合、中耳炎や内耳炎も起こったり、くしゃみや鼻水も出たりする場合があります。

 

 

 

 

 

◆◆◆ この子は急性の発症で、原因の特定は出来ませんでした。

 

■ まずステロイド療法を行い、神経の炎症を軽減させる事としました。

 

■ 治療2日目で、だいぶ症状は改善し、食欲も出てきました!

 

■ 2日目から経口投与が可能になったため、細菌のパスツレラ菌、寄生虫のエンセファリットゾーン、両方の治療を行う事としました。

 

 

 

 

◆◆◆ 治療開始後一週間ですが、自宅では眼振が無くなったそうです!

 

■ 今後も注意して経過を診ていきたいと思います。

 

 

 

獣医師 増田正樹

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