【こんな症例も治りますシリーズ 560】 猫の『 眼底網膜剝離による失明 』も 適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、猫の網膜剝離の眼底像です。

◆ 左上の『暗い部分』は、正常の眼底像です。
◆ 左横の『白い部分』には、眼底の視神経乳頭があります。

■ その他の『明るい』ところは、眼底の網膜が浮いている部分です。

■ この部分が、『網膜剝離』の状態です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3jwqsUq

 

猫 ミックス猫 13歳 オス(去勢手術済)

 

 

【 最近目が見えにくくなった 】とのことで来院された猫ちゃんです。

 

 

◆◆ 見てみると、左右の瞳孔が開いています。 ペンライトを当てても、左右瞳孔は拡大しています。

 

 

■ 猫や犬の視覚を試す検査は数種類ありますが、光を当てて眩しがる反応があるか診る『 眩目反射 』、指を近づけて避けるかどうかの『 威嚇反応 』、そういった眼科検査を行いましたが、この子の反射や反応は『 やや弱い 』です。

 

 

 

■ どうやら完全な失明ではなく、『 視力が極端に落ちている様子 』です。

 

 

■ 続いて一般的な眼の検査を行いました。

 

 

■ 眼に傷があるかの『 フルオレセイン染色検査 』、涙の量を測る『 STT検査 』、『 眼圧をはかる検査 』、いずれも異常はありませんでした。

 

 

 

◆◆ 続いて眼底をみてみます。すると、左右の網膜剥離が認められました。

 

 

 

■ 網膜とは、眼底と呼ばれる眼の奥一面に広がっている薄い膜状の組織です。 眼の中に入った光が映し出される所で、カメラのフィルムまたは撮影素子に相当します。

 

 

 

■ 網膜剥離はその膜が剥がれてしまうのですが、一般的に痛みは伴わないため、犬、猫では発見が遅れてしまいます。

 

 

 

■ 片眼だけ起こる場合は外傷や腫瘍、炎症などの関与が疑われますが、両側での剥離は、犬ではコリー眼異常と呼ばれる遺伝子疾患を考慮しますが、猫で最も多いのは『 高血圧 』です。

 

 

 

■ 血圧測定では収縮期が190mmHg、血液検査をしてみると、甲状腺ホルモンは正常値で、腎臓の数値が高く、『 腎性高血圧 』が疑われました。

 

 

 

■■■ 高血圧が持続的に続くと、網膜の細動脈から出血が起こったり、あるいは動脈が硬化し、滲出液の漏出が起こったりします。 その結果として『 網膜剥離 』が起こります。

 

 

 

■ 治療としては、網膜剥離の手術は本当に極一部の施設でしか行なえないため、高血圧に対する降圧剤などの対処療法になります。 網膜がこれ以上、高血圧により剥離を起こさせないようにするためです。

 

 

 

★★★ 当院の関連病院の眼科専門動物病院では、網膜剥離のレーザー手術治療などの選択肢がありますので、眼科高度治療の紹介も可能です。

 

 

 

■ この子は、飼主様とそのレーザー手術治療も含めて相談した結果、内科的に高血圧治療を中心に行う方針を希望されたので、腎臓の治療と降圧剤内服治療を開始したところ、腎機能の改善があり、血圧と網膜剝離は落ち着いてきました。

 

 

■ 視力は完全ではありませんが、猫ちゃんは生活に慣れてきているようです。

 

 

 

■ 今後も注意し、経過観察を行いたいと思います。

 

 

 

 

獣医師 増田正樹

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