【こんな症例も治りますシリーズ 427】 犬の脳の特殊な前庭疾患 も適切な診断と治療で治します

ワンちゃんの前庭系には、脳にある中心成分と、内耳と中耳にある末梢成分があります。
カタツムリみたいな形をしている周辺が、前庭の末梢部分です。
その下の茶色い部分が、中耳の鼓室胞です。
今回は、この鼓室胞の前庭末梢部分が炎症を持っていた訳です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3wnuNe0

 

犬 柴犬 14歳 オス 去勢手術済

 

【 昨晩から急にふらつくようになった 】とのことで来院されたワンちゃんです。

 

■ よく顔をみてみると、眼が横にふれて、顔が傾いています。

■ 前庭疾患と呼ばれる症状です。

 

 

 

◆◆ 前庭とは、耳の奥にある器官で、平衡感覚を司っています。 ここが何らかの要因で障害されてしまうと、顔の傾き(斜頸)、眼球の振れ(眼振)が出てしまいます。

 

 

 

◆ この状態は、例えれば常に船酔いしているような状態で、気持ちも悪くなり、嘔吐してしまったりします。

 

 

 

◆ 原因としては、外耳炎などの病気が中耳・内耳に波及し、
その結果、

 

 

1)脳の前庭部分が障害されてしまう末梢性前庭疾患、

 

2)前庭より上位の脳神経障害による中枢性前庭疾患、

 

3)特に器官に構造的異常なく症状が出てくる抹消性特発生前庭疾患等、に分類されます。

 

■ 高齢の犬では、甲状腺機能低下症でも同様の症状が起こりえます。

 

 

■ 眼振や斜頸の方向、意識状態、脳神経反射・反応試験を行い、ある程度の分類をし、治療を行います。

 

 

 

■ この患者さんの飼い主様は積極的な方で、CT検査を行いました。

 

■ CT検査による利点は、耳の奥にある組織構造の状態の確認ができる点、ある程度の脳の構造評価が出来る点です。 (脳の評価では、MRI検査の方がより高精度の診断が行えますが、CTでも評価自体は出来ます。)

 

■ CT検査を行なってみると、右の中耳にある鼓室胞に液体が貯留していました。 中耳炎を起こしています。

 

 

■ 眼振や斜頸の方向から判断すると、症状に関与している可能性が高いです。

 

■ そこで、鼓膜切開をし、中耳内洗浄を精密に行い、抗生剤による治療を行いました。

 

 

 

 

※ 通常、前庭疾患は、抗生物質と副腎皮質ホルモン(通称ステロイド)が常法の治療方法ですが、この子はその治療だけでは無理だったと思います。 CT検査に感謝です。

 

 

■ 2週間後、眼振はなくなり、斜頸もかなり改善されてきました!

 

 

◆◆ CT撮影を行ったことにより、一歩踏み込み、治療を行えた症例でした。

 

 

■ 当院ではCT検査を含む、高度医療に対応しております。

 

★ 治りが悪い外耳炎、斜頸、眼振などの症状の時は、是非ご相談下さい。

 

 

獣医師 増田正樹

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