【こんな症例も治りますシリーズ 410】 ワンちゃんの悪化した胆嚢破裂 も適切な診断と治療で治します

https://vetsci.org/ViewImage.php?Type=F&aid=644453&id=F3&afn=118_JVS_20_4_e37&fn=jvs-20-e37-g003_0118JVS

胆嚢に造影剤を入れてCTを撮った画像です。
右の画像の上にある細い部分(枝のように細い部分)は、【総胆管】です。
★ 胆嚢を摘出しても、総胆管に閉塞物が詰まっている事が多いです。
★ ですから、総胆管の洗浄はとても大切です。
☆ ちなみに、両方の画像の左側は、犬にとっての右側です。

 

参照サイト:

https://bit.ly/3uduktl

 

イヌ ビションフリーゼ 12歳 メス(避妊手術済) です。

 

【 炎症性腸炎(IBD)と胆嚢粘液嚢腫の内科治療を行っていたが、最近震えと嘔吐が出て悪化している 】とのことで来院されたワンちゃんです。

 

 

■ 以前より炎症性腸炎疑いと胆泥症の治療をしていたのですが、昨年の血液検査で肝酵素の上昇が見られるようになりました。

 

■ 主に、ドイツの自然療法薬と点滴を続けてきましたが、震えが出るようになり何度も嘔吐するなど体調が急に悪化しました。

 

■ 血液検査結果では肝酵素の著しい上昇が見られ、画像診断では胆嚢の周りに液体の貯留と炎症像が認められたため、胆嚢破裂と診断し、胆嚢摘出術を行いました。

 

 

■ 胆嚢と周囲の組織との癒着があると摘出時にひどい出血が見られることがあるため、凝固検査、輸血の準備を行いました。

 

■ さらに炎症が強い場合、播種性血管内凝固症候群(DIC)という凝固異常を起こす場合があり、死亡率も高まるためDダイマーの測定も行いました。 幸いにも、DICではなく良かったです。

 

 

 

◆◆◆ 胆嚢は大網や肝臓、そして横隔膜と癒着を起こしていたため、丁寧に剥離していきました。 時間がかかりましたが、出血量も少なく無事摘出することができました。

 

 

★ 当院でこのような手術の際に大活躍している手術機器があります。

それは、以前にも紹介させて頂いた【 サンダービート 】です。

 

★ この機器を使用すると、癒着している臓器を切り離すときなどに、短時間で終える事が出来ます。

 

★ 今回は使用しませんでしたが、当院にある【 超音波メス 】も胆嚢破裂の胆嚢摘出にも便利です。 とにかく安全に手術が出来ます。

 

 

 

 

◆◆◆ 手術前に総胆管閉塞物がエコー検査で見つかったので、十二指腸を切開して十二指腸乳頭という部分から総胆管内の内容物を生理食塩水で洗い流し、予想していた程のモノが閉塞していないのを確認して、お腹を閉じました。 閉塞物は、硬いゼリー状の胆汁でした。

 

 

■ 術後は、腸管の蠕動運動の低下や、タンパク質のアルブミンの低下などが一時的にあり、状況が悪化しましたが、集中治療を行った事でV字回復し、食欲も順調に出てきたため10日目に退院となりました。

 

◆◆◆ 胆泥症のワンちゃんは多く見られます。 殆どは無症状ですが、徐々に内容物の流動性が低下してゼリー状になってくると胆嚢破裂の危険も高まってきます。 腹部エコー検査にて胆嚢の状態を定期的に見ていくことが重要です。

 

 

獣医師 新井澄枝

 

 

 

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