【こんな症例も治ります シリーズ 344】 猫の長期の食欲廃絶 も 適切な診断と治療でコントロールします

猫の肝臓リピドーシスが、どのように悪化していくのかを示した図です。 左が健康で、右は重症の様子です。

 

 

参照サイト:

https://bit.ly/39uZ5Qu

 

猫 10歳 メス(避妊済)

【 2週間ほど食欲が無く、人から避けて生活するようになった 】との事で来院されました。

■ 体温は36.5℃まで落ち(猫の正常体温は38℃台~39℃台といわれています)、かなり痩せていました。

また、かなりの脱水状態であることがわかりました。

■ 血液検査では、腎臓の機能を表す「腎数値」が測定不能レベルまで高くなっており、その他腎臓の機能低下を反映する項目もほぼ全て異常値でした。

■ レントゲンや超音波検査でも腎臓の形の不整が見られたため、

進行した「慢性腎臓病」と診断しました。

■ 慢性腎臓病の進行により、食欲不振が続いていたのだと考えられます。

■ 慢性腎臓病に対する入院治療を始めていくと、

黄疸の指標である「ビリルビン」の値が日に日に上がっていく事が分かりました。

■ 長期で食べることができていない猫ちゃん…「肝リピドーシス」という病気にかかっている事を疑いました。

■ 「肝リピドーシス」とは、ご飯を長く食べていない状態が続くと発症するもので、肝臓へ脂肪が異常に蓄積する状態のことです。

■ ご飯をしっかり食べることで完全に治す事ができる病気ですが、ただただ食べさせれば良いというわけではありません。

長期間食べていない体にいきなり大量の栄養を取らせることはとても危険なのです。

■ この子は、本来肝臓で代謝されるべき毒素である「アンモニア」が肝臓でうまく代謝されずに血中にかなり残っていることもわかりました。

■ 「アンモニア」をうまく排泄させるお薬・肝臓に負担がかからないようにするお薬・吐き気止めのお薬等 を飲んでもらいつつ、ごく少量ずつ液体のご飯を経鼻カテーテルから飲ませていきました。

■ もちろん、慢性腎臓病の治療も並行して行いました。

すると、少しずつ「アンモニア」や「ビリルビン」の値は下がっていき、1週間程すると吐く事なく自力でご飯を食べられるようになりました。

■ 少し時間はかかりましたが、腎臓の数値も落ち着き、体温もしっかり上がってきたところで退院となりました。

■ 猫ちゃんの食欲不振は命に関わる場合もあります。

食べていない状態が続いたら、お早めに病院にいらしてください。

 

獣医師 田中聖心

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