【 こんな症例も治ります シリーズ 220 】 犬の僧帽弁閉鎖不全症および子宮蓄膿症も的確な診断と治療でコントロールします。

左は正常の子宮・卵巣、右は子宮蓄膿症です。

 

参照サイト:

https://goo.gl/Pv7UjC

 

 

犬 9歳5ヵ月 メス(未避妊メス)

 

【 3日前から食欲と元気が無い。今朝から吐いている 】というワンちゃんです。

 

■ 身体検査では、ワンちゃんの下腹部がパンパンに膨らんでいて、とてもぐったりしている様子でした。

発情の時期をお伺いすると、2か月前くらいだった、とのことでした。

 

■ 血液検査、レントゲン検査、および腹部の超音波検査などをさせて頂きました。

 

■ レントゲン検査および超音波検査では、子宮が重度に腫大していました。

血液検査では、白血球数が重度上昇(50,000/ul)しており、以上の検査結果から子宮蓄膿症を疑う状況でした。

 

■ 早急に子宮・卵巣全摘出術を行いたい状況でしたが、このワンちゃんの場合、心臓が悪く、雑音が聴診されていたため、心臓の状況を把握するため、心臓の超音波検査を行いました。

 

心臓は、左の心臓の中央にある【 僧帽弁が閉鎖不全症 】になっており、その影響で血液の逆流が起きていたのです。 いわゆる心臓の老化現象の一つです。

 

■ 心臓病の状況を把握したうえで、適切な麻酔薬を厳密に選択し、手早く手術を行いました。

 

■ 怖いことに、開腹した時には、お腹の中に既に膿が出ている状況でした。

微量でしたが、間違いなく子宮から出た膿液だと判断しました。

 

子宮は多量の膿汁で腫大していました。

腹腔内にこれ以上漏れないように注意しながら摘出を行いました。

 

■ 念のため卵巣も含めた病理組織診断検査を行ったところ、悪性腫瘍は否定されました。

摘出した子宮から少量の膿を採取して、細菌培養検査を実施し、その後は検査結果に基づく抗生物質の投薬を行いました。

 

■ このわんちゃんは、今では元気にお散歩で走り回っています!

そして、手術の前の検査でわかった心臓病および甲状腺機能低下症の治療を同時に行っています。

 

子宮蓄膿症とは、発情後に免疫が下がる時期に細菌(大腸菌など)が子宮内に侵入します。

そして、子宮の入口が閉じられてしまっているため膣から侵入した細菌は増殖をし、子宮蓄膿症となってしまうのです。

 

★ この子宮蓄膿症の怖い所は、放っておくと血液凝固能力に問題を来たし、腎臓病を中心とした多臓器不全になり、急性の過程で亡くなってしまうことが多い事です。

 

■ 最近このような子宮蓄膿症で緊急手術を行う症例が多数来院されます。

このワンちゃんのように、高齢になる事で、心臓病やその他病気がある状況だと、非常に麻酔・手術リスクが高くなります。

 

■ 【かわいそう】【自然が一番】といって、予防できる病気になる状況を作ってしまうよりも、将来なる可能性のある病気の予防をしっかりしてあげましょう。

 

獣医師 新美綾乃

 

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