【 こんな症例が治ります シリーズ 216 】 わんちゃんのクッシング症候群と糖尿病の併発 も的確な診断と治療でコントロールします。

 

 

 

 

 

犬 11歳8ヵ月 未去勢オス

 

【 お腹が膨れてきた 】という主訴で来院されたワンちゃんです。

 

■ 身体検査を行ってみると、腹囲膨満と皮膚がカサカサしている状況でした。

 

そして、お話をお伺いしていると、このワンちゃんは以前よりお水をたくさん飲み、尿量が増えてきている【多飲多尿】という症状がでているようでした。

 

■ 血液検査とレントゲン検査、そして超音波検査をさせて頂きました。

 

■ 血液検査の結果では、肝数値の重度上昇、脂質の重度上昇が確認されました。

 

レントゲン検査では、重度の肝腫大が確認されました。

 

そして、超音波検査では、肝臓のうっ血所見および、左右の副腎の腫大が確認されました。

 

■ 腹囲膨満、多飲多尿、左右副腎の腫大、肝腫大、血液検査の結果より、【クッシング症候群:副腎皮質機能亢進症】という病気が疑われたため、病気の診断確定する検査を追加で行いました。

 

■ 精密検査の結果、【 クッシング症候群である 】ということが確定されました。

 

■ そして治療を行っていくうちに、一度はとても元気になったのですが、

その後の再診察の際に、多飲多尿の悪化、体重の大幅な減少、ぐったりしている状況になってしまったことがわかりました。

 

■ その後の身体検査、血液検査、そして尿検査の結果、新たに【糖尿病】が続発して発症している事がわかりました。

 

★ 【クッシング症候群:副腎皮質機能亢進症】とは、

様々な原因により、コルチゾールというステロイドホルモンの一種が異常に作られ過ぎている状況の事です。

コルチゾールが大量に作られてしまう原因は大きく2つあります。

1つが、副腎皮質(コルチゾールを作る部分)に、脳からコルチゾールを作る命令をするホルモンが大量に作用し過ぎる場合です。

 

もう1つが、副腎皮質そのものに異常があり、コルチゾールが大量に作られ過ぎてしまう場合です。

 

■ このワンちゃんの場合、前者の可能性が高いと考えられました。

 

■ クッシング症候群は様々な症状を引き起こします。

その中で重大な併発疾患として、【糖尿病】があります。

 

■ クッシング症候群でコルチゾールが過剰に出されてしまう結果、食後上昇する血糖値を正常に維持するのに必要なインスリンに対して、身体が抵抗するようになります。

 

■ つまり、インスリンが効かない状況が身体の中で作られてしまうのです。

その結果、インスリンが足りないと身体が認識し、たくさんインスリンを出そうと頑張りますが、身体はインスリンに抵抗し続けるので、インスリンを分泌する膵臓が疲れ果ててしまい、インスリンを出さなくなってしまいます。

■■ それが、クッシング症候群から糖尿病が発生するメカニズムです。

 

■ クッシング症候群に合わせて糖尿病が発生してしまった場合、クッシング症候群の治療を行いながら、身体で効く量のインスリンを投与することになります。

 

■ このワンちゃんの場合、インスリンの量を決定してから、低血糖気味になってしまうなど、糖尿病の管理が難航しましたが、今では良好なコントロールができ、経過観察をさせて頂いています。

 

■ 一時はぐったりしてしまい、しっかり歩くこともできませんでしたが、体重も元に戻り、今では散歩でリードをグイグイ引っ張り小走りまでしてくれるようになりました。

 

■■ 腹囲膨満の際には様々な病気が考えられます。

そして、多飲多尿という症状も、身体の中の異変に気付く重要な症状になります。

 

■ 以前よりお腹が張っていたり、お水を飲む量が増えたり、尿量が増えた、尿の回数が増えたなど、いつもと違うかなと思う事があれば、様子を見るのではなく、異変が無い事の確認のためにも一度来院されることをオススメします(^^)/

 

獣医師 新美綾乃

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