【こんな症例も治りますシリーズ 551】 犬の『 突発性後天性網膜変性症 』も 適切な診断と今後のケアー方針を立てます

↑ 上の写真は、犬の眼底像です。

■ 左が、正常網膜です。
放射状に伸びている赤い部分が血管ですが、『しっかり』見えます。

■ 右は、『網膜変性症の眼底像』です。
放射状の血管が『薄くて細くて数が少ない』状態になります。

 

参照サイト:

左) https://bit.ly/3EytcYk

右) https://bit.ly/3gv3Pi6

 

 

犬 ミニチュアダックスフント 10歳 オス(去勢手術済)

 

【 最近、物にぶつかる事が多くなった 】ということで来院されました。

 

 

 

 

◆◆ 10歳という年齢はシニア期に入っていますが、平均寿命を考えるとまだまだ元気に生活してほしい年齢です。

 

 

■ 実際このワンちゃんは定期的に血液検査もしていて、いつも異常所見がなく元気なワンちゃんでした。

 

 

 

■ ライトを目に当てると、普通は光の調節のため虹彩が伸びて縮瞳するのですが、このワンちゃんには全く虹彩の動きが見られませんでした。

 

 

 

■ 眼底鏡で眼底を覗くと、血管の萎縮が確認できました。

 

 

 

■ また、メラン100という機器を用いて網膜スクリーニング検査を行ったところ、『 突発性後天性網膜変性 』という病気になっていることが判明いたしました。

 

 

 

■ 突発性後天性網膜変性症(SARD)では、網膜に急性に異常が起こり、突然発症します。

 

 

★ 発症の平均年齢は9歳頃で、中年齢から老年齢でよくみられ、雌犬に多いともいわれています。

 

 

■ 残念ながら原因は不明で、回復することもない病気です。

 

 

※ 2021年の米国とカナダの研究では、がんの関連で起こる癌関連網膜症(CAR)が突発性後天性網膜変性症(SARD)と類似しているので、比較研究がされましたが、免疫介在性のCARとSARDとは『 遺伝子発現に関して明らかに異なっていた 』という報告でした。

 

※ マニアックな話になりますが、SARDと診断された犬も、免疫介在性の癌関連網膜症CARの可能性があると言う事。 特殊な免疫抑制療法で、失明が一定期間回復した症例がいると言う事。 などが書いてありました。 ただし、硝子体内 IVIg 注射療法という、とても特殊な方法なので、一般医のいる動物病院での実施は、お勧めしません。

 

 

■■■ 現実的には、家庭内にある危険な物を、動物さん目線で考えて排除していただく必要があります。

 

 

■ 動物さんは人間よりも『 視力以外の感覚 』が鋭いので、慣れた室内でしたらあまり苦労せず生活出来るかもしれません。

 

 

 

★★★ スキンシップや声のトーンを変えて、今まで以上に可愛がってあげてほしいと思います。

 

 

 

獣医師 新井澄枝

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