【こんな症例も治ります シリーズ 326】全身のリンパ節の腫れなど、複数の症状で苦しむワンちゃんも適切な診断と治療で治します

右目の黒目の部分が“赤色”です。 原因は、今回のような腫瘍の場合もあります。

 

参照サイト:

https://bit.ly/2CX4vp0

 

ミックス犬 6才 去勢オス

 

【 去年から徐々に痩せてきた(14KG ➜ 10KG)、左眼が見えにくい、呼吸がしにくそう 】とのことで来院されました。

 

■ 身体検査では、両眼とも眼内出血(眼球に血液が溜まっている)、体表リンパ節の腫れ(触診で触れる下顎・膝窩リンパ節が特に)、腹部膨満(お腹が張っている)が認められました。

 

■ 眼だけであれば眼科疾患が疑われますが、全身のリンパ節の腫れから、重度の感染症またはリンパ腫という悪性腫瘍の可能性が疑われたため、全身検査として血液検査・レントゲン検査・エコー検査・細胞診検査をさせて頂きました。

 

■ 血液検査では、軽度の貧血と白血球の増加(感染・炎症・腫瘍で上昇)・軽度の低タンパク血症が認められましたが、内臓器系(肝臓・腎臓)は問題ありませんでした。

 

■ 胸部レントゲン検査では肺に異常は無く、腹部エコー検査では肝臓がやや汚くみえ、脾臓は腫大、腹腔内リンパ節も腫大、腹水貯留が認められました。

 

■ 細胞診検査では、体表リンパ節と肝臓・脾臓から大型のリンパ球が採れたためこの時点で悪性リンパ腫と診断しました(ステージ5段階中4、注:5が一番悪い)。

 

■ リンパ腫は、血液の中のリンパ球が増殖・腫瘍化してしまう悪性腫瘍です。

発生する場所により症状は異なることもありますが、約80%はこの子のように複数の体表リンパ節が腫れてくるタイプのものです。

 

■ 血液の腫瘍になりますので、治療は内科治療(ステロイド・抗がん剤)となります。

 

■ オーナー様と相談し、抗がん剤(3~4種類を組み合わせ)は希望されませんでしたが、ロイナーゼという比較的他の抗がん剤より副作用がない注射と、ステロイドの内服をスタートしました。

 

■ すると3日後にはリンパ節の腫れはなくなり、呼吸も正常に戻りました。

 

■ 眼内出血も3週間ほどで徐々に治まり、眼も見えるようになってきています。

 

■ 現在初診から1カ月半で、ステロイドも効きにくくなる時ですがリンパ節の腫れが落ち着いていて、当院の特徴的治療であるオゾン療法や肝臓のサプリメントも併用することでステロイドの副作用も抑えられています。

 

■ 眼の病気は、全身症状から関連することもあるので、すぐ来院しましょう。 また、体表リンパ節の場所や大きさは、日常から触って確認してみてください。

 

獣医師 野村竜哉

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